八月の水

 11月の終わりのお店がお休みの日、奈良公園から高畑界隈に歩きに行ったとき、とあるお店で「八月の水」という雑誌を見つけ、その創刊号を買って帰りました。

 この雑誌は年刊ということで、毎年1回発行されています。
 発刊のきっかけは、東日本大震災とその後の混乱で、当時、ほとんどの人がこの震災をわが身に引き寄せてさまざまな思いをめぐらせたのですが、そんな中でこの雑誌は、これからの時代、「旅人」や「詩人」のはるか遠くを見つめる強いまなざしと優しさがきっと必要になるはずだという考えのもとに発刊されたと前書きに書かれていました。
 わかるような気がします。
 日常の些細な人間関係の軋轢や利害関係にとらわれている自分の、はるか遠い所にいる等身大の本当の自分と出会いたいという気持ちを、今、多くの人が持っていると思います。
 創刊号の最初に掲載されている森文香さんの「小さい龍のはなし」に感動して何度も読み返しました。
 その中に「何もないということと、すべてあるということは同じ意味である」という言葉があります。
 この言葉の持つ重い意味をどこまでもかみしめていく。それがあの震災後を生きる私たちに何か大きな希望をもたらしてくれるのではないかという気がします。



雑誌「八月の水」はお店の本棚においてあります。